国内での感染拡大状況は…

神戸で新型の国内2次感染と見られるケースが発見されたという情報が入ってからしばらく経った。
聞くところによればこの患者は検体を検査機関に送ったが季節性インフルエンザだろうという事で検体が3日ほど処理待ち状態だったとの事。
つまり潜伏期間+この3日完全に放置状態だったという事は患者が高校生という大量の人員と接触している可能性が高い人物である事も考え合わせると、国内での封じ込めは完全に絶望的だと言わざるを得ない。既に大都会に病原体は解き放たれたと思って間違いないであろう。

拡大ルート

今後は近隣の大阪・京都・岡山・広島などに2〜4日以内に拡大するのは必至だと言える。
主に会社員・学生がウィルスを運んで拡散させるので、通勤ルート沿いに拡がるであろう。
在来線でいえば山陽本線近鉄などが真っ先に拡大ルートとなると思われるので沿線住民は即座に対策を行ったほうが良い。

在来線ルートでいえば東は大垣〜米原、西は播州赤穂で一度路線の流れも途切れ、人の流れが変わるのでそこで1日程度拡散は遅延するだろうがそれでも岡山・愛知両県を東西の端とする領域に拡大するのに4日もかからないのではないだろうか。
殊に大阪あたりで患者が出る状況では既に潜伏期寒中に移動しているということもあり、まだ発症に至っていないだけでウィルスそのものは既に各地域に入っていると考えるのが妥当であろう。
また、新幹線というものもあるので遠方だからといって安心は全くできない。
大阪で患者が数十人出た段階で既に潜伏期間中の感染者が福岡・東京あたりまで行っている可能性も高い。
そういうわけなので今週中にも国内の離れた地点(東京など)でも発症者がでるだろうと予想される。

新幹線が通じている、ないしは国内線でも空港があるなど交通の便のある程度良い地域に在住している者は感染防御をすぐに講じておくべきである。
いくら毒性が弱いタイプだといってもインフルエンザというものは季節性のものでさえ一旦発症するとまず仕事も何もできなくなる。
しかも他人に伝染する能力が極めて強い病気である。
つまり新型かどうかに関わらず職場・学校で流行すればあっという間に機能麻痺であり色々と不都合の嵐が巻き起こること確実なのだ。

世界的にはうまくいっている

日本国内での感染が本格的になったんで↑のような事を書いてはみたが、全世界的にはかなり対策はうまく行っていると弊社は思う。
メキシコでのアウトブレイクの時点・アメリカへの拡大の時点ではCDCもWHOも出足が遅れた感はあったが、その後の展開はどうだったか。

以前のシミュレーション通り全世界を一周するのに約一週間程度かかったわけだが、その後は各国の水際防御のせいか患者数の増加は当初予想よりはるかに遅いものであった。
日本についても弊社は4月26日の記事で5月第一週には国内感染出るのではないかと予想していたが、 実際には帰国者が感染していた事例が出ただけであり、これも水際で食い止めたので予想は外れたことになる。
その後1週間以上経過してこの事態なので追跡不能になってしまったのは不手際というより不運としか言いようがない事態ではあるものの実に良くやったと言って良いだろう。
少なくとも今のところ弊社は政府の対応にGood Job評価を与えている。

さて、そろそろもっと詳細な情報についての記事も書いたほうがよさそうであるな。
他のサイトは緊急情報とかで一斉に色々書いてるようだが、我が研究所ではあくまでも強毒についての研究が主体であったので、それをメインに弱毒型の情報も追加しつつじっくりやることにする。
ニュースやら他のブログでも見ながらたまにはチェックしてほしい。

Pandemic alert:Phase-5

Lofwyr2009-04-30

Phase-4宣言の記事はなんとか携帯で書いたものの…結局弊社も緊急対策で徹夜仕事であり、体力維持のためにしばらく寝ておるうちにPhase-5宣言となった。
前記事で対策要員乙とか言っておきながら自分が対策で徹夜とは…マヌケノキワミアッー!(ニコ厨風に嫁)

今日も例によってWHOステートメントを見てみる事にするが、その前に今回はなぜかWHO謹製動画がUPされてる(WMV形式なので対応プレイヤーを用意のこと)ようなのでちょいと見てみるがよかろう。
以下に引用するステートメントは動画でチャン氏が喋ってる内容そのまんまである。

Ladies and gentlemen,

Based on assessment of all available information, and following several expert consultations, I have decided to raise the current level of influenza pandemic alert from phase 4 to phase 5.

私(チャン氏)は現在利用可能なあらゆる情報の評価および専門家の協議に基づき、インフルエンザパンデミック警戒レベルをPhase4からPhase5に引き上げることを決定した。

Influenza pandemics must be taken seriously precisely because of their capacity to spread rapidly to every country in the world.

On the positive side, the world is better prepared for an influenza pandemic than at any time in history.

Preparedness measures undertaken because of the threat from H5N1 avian influenza were an investment, and we are now benefitting from this investment.

For the first time in history, we can track the evolution of a pandemic in real-time.

インフルエンザによるパンデミックはその強力な感染拡大能力により極めて迅速に世界中に拡がるため、重大かつ率直に受け止められねばならないものである。

一方、幸いな事に我々は歴史上いかなる時点と比しても最も対策ができていると言えるだろう。
H5N1鳥インフルエンザに対する備えは先行投資であったが、我々は現在この投資より利益を得つつある。
歴史上初めて我々はパンデミックの推移をリアルタイムに監視できるのである。

I thank countries who are making the results of their investigations publicly available. This helps us understand the disease.

I am impressed by the work being done by affected countries as they deal with the current outbreaks.

I also want to thank the governments of the USA and Canada for their support to WHO, and to Mexico.

調査結果を公開している国に対して感謝する。彼らの行いは我々がこの疾病を理解する上で大いなる助けとなっており、彼らが感染拡大の現場で成し遂げた仕事には大変な感銘を受けた。
私はアメリカ合衆国、カナダのWHOへの賛助およびメキシコ政府に対して感謝の意を表明する。

Let me remind you. New diseases are, by definition, poorly understood. Influenza viruses are notorious for their rapid mutation and unpredictable behaviour.

WHO and health authorities in affected countries will not have all the answers immediately, but we will get them.

ここで注意をしておきたい事がある。この新疾病に関して我々は正確な定義・理解を未だ有していないという事である。
インフルエンザVirusはその急速な変異性と予測不能な振舞いで悪名高い。
WHOにも感染の場となった各国の保健機関にもその全貌に関する全ての情報があるわけではない。
だが、我々はいずれ彼らを追い詰めるであろう。

WHO will be tracking the pandemic at the epidemiological, clinical, and virological levels.

The results of these ongoing assessments will be issued as public health advice, and made publicly available.

WHOは疫学的・臨床的・ウィルス学的な各レベルでパンデミックを監視しており、その評価は公衆衛生アドバイスとして一般に公開される。

All countries should immediately activate their pandemic preparedness plans. Countries should remain on high alert for unusual outbreaks of influenza-like illness and severe pneumonia.

全ての国家は即座にパンデミック緊急対応計画を発動し、インフルエンザ様疾患および重症肺炎を伴う疾病の発生に対して高度の臨戦態勢を取らねばならない。

At this stage, effective and essential measures include heightened surveillance, early detection and treatment of cases, and infection control in all health facilities.

現段階に於いて効果的かつ必要な措置は高度な監視体制による感染の早期発見・早期治療*1と全ての医療機関による感染症制圧行動である。

This change to a higher phase of alert is a signal to governments, to ministries of health and other ministries, to the pharmaceutical industry and the business community that certain actions should now be undertaken with increased urgency, and at an accelerated pace.

今回の警戒レベル引き上げは各国政府・製薬業界・経済界・関係各省庁に対して感染制圧のための努力をさらに徹底的かつ迅速に行われなければならないというシグナルを発するためのものである。

I have reached out to donor countries, to UNITAID, to the GAVI Alliance, the World Bank and others to mobilize resources.

I have reached out to companies manufacturing antiviral drugs to assess capacity and all options for ramping up production.

I have also reached out to influenza vaccine manufacturers that can contribute to the production of a pandemic vaccine.

私はUNITAIDGAVI Alliance*2世界銀行および資源・資金提供を行う各国と接触を取り、抗ウィルス薬およびその他関連製剤*3の生産効率を高めるために製薬会社とも連絡を取り、パンデミックワクチンの製造能力を持つ企業とも接触を図った。

The biggest question, right now, is this: how severe will the pandemic be, especially now at the start?

It is possible that the full clinical spectrum of this disease goes from mild illness to severe disease. We need to continue to monitor the evolution of the situation to get the specific information and data we need to answer this question.

From past experience, we also know that influenza may cause mild disease in affluent countries, but more severe disease, with higher mortality, in developing countries.

今この時点における最も気がかりな点はパンデミック発生初期においてどの程度厳しい状況になり得るかという点であろう。
問題点はこの疾病の臨床的な特性が軽度のものから極めて重いものに変化する可能性である。
我々はこの問題に対処するために必要な情報を得るために常に疾病の変化をモニターし続ける必要がある。

過去の経験によるとインフルエンザは経済的に豊かな国では軽度の疾病であっても、貧しい開発途上国においては重度のより致命的なものとなる事が知られている。

No matter what the situation is, the international community should treat this as a window of opportunity to ramp up preparedness and response.

Above all, this is an opportunity for global solidarity as we look for responses and solutions that benefit all countries, all of humanity. After all, it really is all of humanity that is under threat during a pandemic.

状況がどうあれ、国際社会は今この時が対応と準備のための機会と心得るべきである。
即ち、パンデミックは人類全体に及ぶ真に差し迫った脅威であり、これは人類全体が問題解決と共通の利益のために団結する機会なのである。

As I have said, we do not have all the answers right now, but we will get them.

Thank you.

敢えてもう一度言う。我々は全ての答えを未だ手にしてはいない。だが、我々は必ず正答を得るだろう。
御清聴に感謝する。

WHO | Influenza A(H1N1)

例によって緑色は弊社によるテキトー意訳であるが、何とも厳しい文面であるな。
なんか今にも世界最後の日が訪れそうなノリがある。
単にこうでも言わなけりゃどうしようもないほど皆がバラバラで好き勝手絶頂気ままに振舞ってるというだけなのだろうが。

マスコミ各社も何やら巨大隕石でも降って来るようなノリで報道を繰り返してはいるが、今流行中の株はあくまでも弱毒性である。
通常の季節性より何倍も致死率が高いとはいっても、やっぱり弱毒は弱毒なので報道の煽りに乗せられてはいかん。

ただ、一つだけ確実に言えるのはWHOが今の弱毒性Virusの流行から強毒新型に発展する可能性を極めて重く見ているという事だ。
もしこれが起これば人類滅亡はなくとも現在の世界秩序は見事なまでに崩壊するだろうからのう。

しかしまぁ麻生総理も大変であるな。波乱の渦中で就任したかと思いきや経済危機は起こるわミサイルは飛んでくるわで大仕事だらけの中でこの騒ぎ。
全くもってWorld crisis on paradeとしかいいようがない状況である。これほど受難の総理も珍しい。
過労死せんように頑張ってもらいたいものだ。

カテゴリ整理してみた

何やらここ最近の記事のタグが色々入り乱れてたので全部まとめて新型インフルエンザカテゴリに整理してみた。 ブックマークRSSとあわせて利用してもらいたい。

*1:この場合強制収容隔離を暗に意味していると思って良いだろう。

*2:UNITAIDは製薬会社の組合、GAVIはワクチン製造関係の共同体のようだがどっちも詳細については調べてない。

*3:いわゆるアジュバントの事だと思われる

対Virus戦争開戦::WHOがAlert Level-4を宣言

いよいよ本大戦も本格開戦となった。
前記事で述べた通り、Aleart Level-4宣言は実質的な宣戦布告である。
今回の宣言は強毒型変異を起こす前に制圧体制を取るための人類側からの先制攻撃を実施するためという考え方によるものではないだろうか。

WHOのステートメントを見てみよう。
緑字は弊社によるテキトーな意訳である。

Swine influenza

The Emergency Committee, established in compliance with the International Health Regulations (2005), held its second meeting on 27 April 2009.

The Committee considered available data on confirmed outbreaks of A/H1N1 swine influenza in the United States of America, Mexico, and Canada. The Committee also considered reports of possible spread to additional countries.

On the advice of the Committee, the WHO Director-General decided on the following.

緊急委員会(International Health Regulations (2005)に基き設置)は2009年4月27日に第二回会合を実施した。

委員会はアメリカ合衆国・メキシコ・カナダでのA/H1N1豚インフルエンザの感染状況を考慮し、その他の国地域への感染拡大の可能性について検討し、その勧告によりWHO Director-Generalは以下の決定を下した。

  • The Director-General has raised the level of influenza pandemic alert from the current phase 3 to phase 4.
    The change to a higher phase of pandemic alert indicates that the likelihood of a pandemic has increased, but not that a pandemic is inevitable.
    As further information becomes available, WHO may decide to either revert to phase 3 or raise the level of alert to another phase.
    This decision was based primarily on epidemiological data demonstrating human-to-human transmission and the ability of the virus to cause community-level outbreaks.
  • インフルエンザPandemic alertを現在のPhase-3からPhase-4に引き上げる。
    この決定は、パンデミック発生の見込みがより上昇した事を意味するが、パンデミックの発生が不可避なものとなったわけではない。
    より詳細な追加情報が入った場合、WHOはこのPandemic alertをよりPhase-3に戻すか、より上の段階に引き上げるか決定するだろう。

    なお、この変更は人-人感染能力を示す疫学的データとコミュニティレベルでの感染を引き起こすVirusの能力に基づいて決定されたものである。

  • Given the widespread presence of the virus, the Director-General considered that containment of the outbreak is not feasible. The current focus should be on mitigation measures.
  • Virusの広範な拡散状況を考慮するならば、もはや封じ込め作戦の成功は困難だと判断せざるを得ず、今後の対策は被害の軽減に焦点を合わせなければならない。

  • The Director-General recommended not to close borders and not to restrict international travel. It was considered prudent for people who are ill to delay international travel and for people developing symptoms following international travel to seek medical attention.
  • 国境の閉鎖や国外渡航の制限はこれを推奨しない。病気のために移動を遅延させたり旅行中または後に発症の兆候が現れている人員に医療措置を受けさせるためにも慎重に判断すべきである。

  • The Director-General considered that production of seasonal influenza vaccine should continue at this time, subject to re-evaluation as the situation evolves. WHO will facilitate the process needed to develop a vaccine effective against A(H1N1) virus.
  • 今回の流行の進展状況を評価するために季節性インフルエンザワクチンの製造は継続すべきである。WHOはA(H1N1)対抗するためのワクチン開発プロセスを容易ならしめるための施策を講ずる。

  • The Director-General stressed that all measures should conform with the purpose and scope of the International Health Regulations.
  • 全ての措置がInternational Health Regulationの目的・範囲に合致するものであるべきである。

http://www.who.int/mediacentre/news/statements/2009/h1n1_20090427/en/index.html

なんというかいきなりの封じ込め失敗宣言。
これは事実上パンデミック開始って言ってるようなもんであるが、本当だから仕方ないか。

そろそろ各自治体にも対策本部とか作る話になりそうである。
各企業にも緊急対処要領を実施するようにとかお達しが来るであろう。
つまり休み返上で仕事をせねばならない可能性もあり対策要員乙である。

おっ、何やら電話が来たようなので今日はこれまでっ。

情報整理

第一報がたしか3月下旬くらいに入ってから随分たつ新型情報ではあるが、ここへきてやたら情報があふれ返ってきやがったのでちょい整理。
はてなブックマークやダイアリーなどでキーワード検索すると非常に良い情報源が多数見つかるし、最新情報やらまとめなどは2CH等の人々のほうが速い&専門知識あると思われるのでそちらに任せても良いだろう。
というわけでこちらは情報を削り落として簡単にしたほうが良いかもしれない。

現状は何か変

多数の情報源で現状を根掘り葉掘りしてみたのだが、やはり流行中の型はH1N1亜種で間違いなさそうである。
CDCによれば人→人感染型と確定されたようなので最早豚インフルエンザと呼ぶべきではなく、完全に人新型インフルエンザと認識すべきであろう。
モノとしては季節的に流行するAソ連型というアレの一種なのだが、派手にPandemicを起こす変異型は季節性のそれとはかなり様子が異なるようである。

既にメキシコではかなり死者が出ており、今のところ致死率2%〜5%くらいで上下しているように見える。しかもなぜか10〜40代の健康かつ活発な年齢層に死者が集中している
季節モノのインフルエンザでは高齢者・乳幼児などのハイリスクグループを中心に約0.5%程度の致死率である事を考慮するとこれは明らかにおかしい。
H5N1などではサイトカインストームと言って、免疫系が自己の組織まで攻撃・破壊して死に至る現象があるのだが、弱毒型でそういうのがあるという話は聞いた事が無いので特殊な日和見感染症が同時流行してるという可能性も考えられる。 だが、世の中何があるかわからない。特にVirusに常識などは通用しないのでここは専門家の分析情報を注視する必要がある。

何にせよ新型流行の際には既存の免疫がほぼ役に立たないので仕事や学校などで街中をうろつく現役世代が一番感染率が高くなる傾向があるから、学生や働き盛りの人々は厳重に感染予防策を講ずるべきである。
つまり自宅警備員最強って事か。良かったな!

予防措置などのこれからの行動に関わる情報として目安になるものがいくつかあるので以下にあげていくので参考にしてほしい。

WHO Influenza Pandemic Alert

現状の世界的な流行情報を元にWHOが宣言する警戒レベルがWHO Influenza Pandemic Alertである。
世界各国はこれを元に各自の緊急感染対策計画を発動するようになっている。
2009年4月26日現在ではPhase-3で、これはここ数年のH5N1騒ぎのせいであがった数字であるので、緊急会合が開催されるに至っている現状では近いうちにPhase-4が宣言される可能性がある。

大まかに各レベルの意味は次の通り。

Phase-1
人間以外の動物感染症として確認されているのみ。人への感染例なし。
Phase-2
まだ人への感染はないが危険な兆候(家畜などでの流行)がある。
Phase-3
Epidemic前兆期。限定的な動物→人感染が認められるが、その流行は限定的範囲にとどまる状態。
この状態までであれば封じ込めは十分可能。
Phase-4
地域的緊急事態。人→人感染型発生が確定し、一定の地域内での流行が認められる。
この時点では封じ込めが困難になり、パンデミック発生のリスクが大きくなる。
Phase-5
大規模感染拡大開始。複数の大都市圏で感染発生が認められる。
まだ拡大は限定的ながら実質的にパンデミックへ移行しつつある状態。
封じ込めは小規模国家でなければほぼ絶望的。
Phase-6
パンデミック発生。封じ込めは完全に失敗し、地域ごとの制圧作戦に任せるしかない。

現在の世界防衛体制ではH5N1などの強毒型にターゲットを絞っているので、各国の緊急防衛計画はPhase-4が宣言された時点で発動されるように設定されている事が多く、これを宣言する事は極めて重大なメッセージを発する事になる。
その一方で、一旦Phase-4事態まで行くと、一気にPhase-5→Phase-6と進行すると予想されており、そうなると強毒型との混合感染→強毒人型発生となって手が付けられない大惨事に発展する恐れがある。
それゆえに今回のケースでWHOがPhase-4を宣言するかどうかはかなり難しい判断を伴うであろう。

で、関心の的はといえばLevel-4宣言が出たときに何がなされるのかという事であるな。
日本の場合の対策は…えーと、ソース探してみるか。ソースソース…お、あった。
厚生労働省の新型情報ページを見るとどうも内閣官房のほうに飛ばされるんだが、これは挙国一致体制でいくしかねぇって事なのだろう。
で、一々引用とかやってると長いので直接国民が関わる部分を抜いてみる。

海外発生期での対応
  • 出入国制限・検疫強化…これは言うまでもない。外務省の渡航情報ページでも見れば良かろう。一旦出ると帰ってくるのも難しくなるので覚悟すべし。
  • 在外邦人に対しての情報提供云々…大使館と連絡取れるようにしとけって事か。
  • Pre-Pandemicワクチンの接種…これはやるかどうか謎。H5N1亜種を想定して事前に鳥型から作ったモノを接種。
    これは社会機能を維持する上で重要な職にある者を最優先に優先順位を設けて接種されるようになっている。今回は型が異なるのでやるかどうかは政府の判断次第。
  • Pandemicワクチンの製造…本番で流行った型を採取して作ったモノをこれまた優先順位に従って接種。ただし、実際に量産・接種開始できるまでは結構な時間がかかる。

大体予想の通りといえばそうだろう。ただ、ワクチン関係などは治安維持要員やら医療関係者、基本インフラ維持要員などが優先という原則があるので一般国民にはパンデミックワクチンの量産化後にぼつぼつ接種が始まるくらいと見て良いかと思われる。
つまりそれまでの期間をどうにかして耐え抜けという事であるな。ワクチンやらに関してはいろいろまた書く事もあるだろう。

国内発生時の対応
  • 感染者に対する入院措置および抗Virus薬の投与…多分入院は強制収容になる。クスリについては備蓄分のタミフルリレンザという事になるのだがすぐ弾切れ起こすと思われる。この措置を受けたら死亡フラグ1つ立ったと思ってよい。
  • 接触者に対する追跡調査を行い、移動制限とした上で抗Virus薬の事前投与…つまりばら撒くなという事で感染の恐れがある者を軟禁。発症前にタミフルなどを事前投与して増殖を抑制する措置。
  • 感染発生地域での集会・外出の自粛要請、学校閉鎖…実質的に非常時モードになる場合がこれ。生活が苦しくなるので物資備蓄等があったほうが良い。各県・市町村で感染者が出たよという情報があったらこの措置の危険性大。
  • 地域住民全体に対する抗Virus薬投与や移動制限措置…非常事態宣言出てるだろこれ。いわゆる外出禁止令状態。戦争だから仕方ない。空襲警報だと思って耐え抜け。
  • 発熱センターなどの特設医療施設設置・病院等の緊急体制措置・トリアージ強化…感染かどうかの初期診断を行い、上記の薬物投与・隔離措置を取るかどうかを判断する体制。
    基本的に病院はホットゾーン扱いなので明らかに関係ない軽症者は近寄るべきではないが、疑わしい症状・感染源との接触がある者は早期診断に行くべき。
    病院などの通行順路などは厳重に制限され、患者間の距離なども制限を受け、不要不急の医療措置は全て停止されると思われる。
  • 各企業への感染予防措置要請・不要不急の業務縮小体制要請…あんまりひどいと職場も休みになる。海外出向組なんかは真っ先に引き上げさせられるだろう。
    ていうか倒産しないかどうかが心配であるが、死んだらさすがに転職もへったくれもない。

これらの策は海外で強毒型が発生したという想定に基づくものなので実際にはどういう施策がどの順番でくるかは全くわからない。
ゆえに大本営(WHO/内閣官房)や地方自治体の情報を見ていくしかない。

個人防護策

結論からいうと物理的防御策以外個人でできる事はない。だが、当たらなければどうということはないというのはこの場合真理なので簡単にリストアップしておく。
これまた詳細は省略。各項目ごとにいずれ記事書くだろうから予定表として書いておく。

  • 情報源の確保…言うまでもない。正しい知識と情報が防衛の大前提。
  • 外出抑制・体力温存…ハンバーガヒルにわざわざ出かける事もないだろう。
  • 物資備蓄(防護用品・生活物資・ゼニ)…定額給付金(麻生マネーと命名)がこんなところで役に立つとは!
  • マスク等の防護用品の適切な使用…N95規格・N98規格などの適合品が望ましい。防具なしで出歩くのはやめたほうが良い。
  • グレーゾーンから戻った際には手などを徹底洗浄…汚物は消毒だ!うがいも効果的。洗い方は飲食店などで採用してる方式などを参考に。
  • 空気清浄機などの使用・湿度維持…最近の高性能品マジお勧め。効果あり。室内湿度は50%〜60%でVirus活性がかなり下がるとの事。あと、部屋掃除しとくべし。
  • 感染が疑われる場合の早期受診…そのまま放って置くと大変な事になります、よ。
  • 医師の指示には絶対従う…パニック起こすな。Virus撒くな。あとクスリは指示通りに使用しないと死ぬかも。
  • 家庭内では感染者との道具の共用は避け、消毒もする…器具消毒は熱湯・アルコール・次亜塩素酸系漂白剤などで良い。心配でもあまりそばについてると感染るかも。接触したら風呂入れ。

ふつーの風邪予防策じゃねーかとか言うなかれ。
専門家による多数の研究によるといかなる予防薬・抗Virus薬も上記のような物理的防御策に勝る事はないと結論しているほどである。
また、家庭内で感染者が出た場合、家族などにもタミフルなどを事前に服用するように指示されることがあるのでこれもきっちり守るべし。

各項目はまたいずれぼつぼつ薀蓄をたれて見たり妄想記事かいてみたりするかもしれぬ。
本当は2011年末発生と山を張って2年くらいかけて予言的記事書いてみるとかするつもりだったが見事にアテがはずれたようであるな。
今後は実況交えつつ書いていく予定なり。

OutBreak確認

先日の記事にて新型インフルエンザがどれくらい凶悪な被害をもたらす疾病であるかというような内容の記事を書いたので、1年寝かせてから続きを書こうかと思っておったのだが、ちょいと緊急っぽいニュースが入って来た。
第一報は結構前から入ってはいたが、テーマの強毒新型Virusと異なるモノのようなのでしばらく静観していたのだが、不穏な状況であるので1年寝かせるわけにもいかなくなった。
というわけで今回は急遽予定を変更して現在進行中のOutbreakについて調べてみた。

豚インフルエンザEpidemic進行中

現時点で既にいくつかのマスメディアが報じるほどには騒ぎが大きくなってきているので気が付いている者も多かろうが、北米大陸を中心に豚インフルエンザのEpidemicが進行中である。
豚〜とはいえ実際には人型にも鳥型にも感染し得るので問題のブツがどこの起源のナニモノなのかはまだわからないといったところ。というか現代流行するインフルエンザはほぼ豚由来なので豚型=人型と考えても差し支えないくらいなのだが。*1
ひとまず報道の記事でも引用してみる。

【4月25日 AFP】メキシコのホセ・アンヘルコルドバ(Jose Angel Cordova)保健相は24日、同国で豚インフルエンザにより20人が死亡し、さらに40人の死因が豚インフルエンザだった可能性があり調査中だと発表した。コルドバ保健相はこれに先立ち、ブタの体内で変異したウイルスがヒトに感染したと述べていた。

メキシコ当局は豚インフルエンザに感染した恐れがある943人を調査中だとしている。メキシコ政府は人ごみや地下鉄の利用を避けるよう呼びかけ、首都メキシコ市(Mexico City)の学校と博物館を閉鎖した。

メキシコ政府は50万人分のワクチンを備蓄しており、医療関係者にワクチンを接種する予定。メキシコ市当局は「季節性インフルエンザワクチン未接種のすべての人」に予防接種する方針を示したが、都市部には約2000万人が暮らしており、ワクチンの備蓄量は十分ではない。

メキシコのフェリペ・カルデロン(Felipe Calderon)大統領は、旅行の予定を取り消し、急きょ閣僚と対応を協議した。

メキシコ市の国際空港には医療チームが配備され、すべての乗客に問診票への記入を求め、インフルエンザの兆候がある人には旅行を搭乗を取りやめるよう助言している。

■米国でも7例

米国でもカリフォルニア(California)州で5件、テキサス(Texas)州で2件の豚インフルエンザの人への感染が確認された。

米国の保健当局者は、米国南部で見つかった7人の感染者のウイルスには複数の型があったことを明らかにし、強い懸念を示している。

米国の米疾病対策センター(US Centers for Disease Control and Prevention、CDC)によると、豚インフルエンザについてはブタ用のワクチンは存在するが、人への感染を予防する専用のワクチンはないという。

CDCのウェブサイトには「季節性インフルエンザワクチンは、H3N2型豚インフルエンザの予防にはある程度の効果が期待できるが、H1N1型ウイルスへの効果は期待できない」と掲載されている。

■WHO、欧州も警戒

世界保健機関World Health Organization、WHO)は、メキシコで18人が死亡したことを確認し、うち12例が米カリフォルニア(California)州で見つかったインフルエンザウイルスと遺伝子組成が同じだったと発表した。

患者の大半が過去大きな病気をしていない健康な若い成人だったという。

WHOは豚インフルエンザがヒトインフルエンザのパンデミック(爆発的流行)のきっかけになるおそれもあるとしており、世界的な疫病オペレーションセンターの活動を開始させた。

メキシコでのウイルスの型がすべて明らかになったわけではないが、欧州疾病予防管理センター(European Centre for Disease Prevention and Control、ECDC)は、「少なくとも2つの例で米国のCDCが確認した新しい A/H1N1型ウイルスは、パンデミックを引き起こしうるタイプのウイルスに発展する恐れがあるかもしれない」としている。

■米国では過去に死者も

H1N1型豚インフルエンザが人に感染した例は米国で、1976年、1988年、1986年に記録があり、1988年には2人が死亡した。

近年、パンデミックの懸念は、2003年以降421人が感染し、257人が死亡したH5N1型インフルエンザウイルスに集まっていた。

ブタが人と鳥のインフルエンザウイルスに同時に感染すれば、ブタの体内でウイルスが変化し、より病原性の強いウイルスが生まれる恐れがある。©AFP/Sophie Nicholson

メキシコで豚インフルエンザ、60人死亡か 写真4枚 国際ニュース:AFPBB News

さらに、MSN産経が以下のように報じている。

疾病対策センターCDC)は24日、米国で感染者が出た豚インフルエンザについて、人から人に感染するウイルスだと断定した。米国では23日、感染者7人が確認されていた。一方、世界保健機関(WHO、本部ジュネーブ)は24日、メキシコで豚インフルエンザの感染が疑われる症例が800件前後あり、約60人が死亡したことを明らかにした。

豚は人と鳥の双方のインフルエンザに感染し、体内でウイルスを人から人に感染する新型に変異させる恐れが指摘されていた。CDCによると、米国では3月下旬から4月中旬、カリフォルニア州で5人、テキサス州で2人が発症した。

メキシコでは過去数週間の間にメキシコ市周辺で57人、同国中部で3人の死者が出た。ウイルスの型は確認されていない。メキシコ政府はメキシコ市と中部のすべての学校を休校にすることを決めた。

厚生労働省は24日、米国とメキシコで豚インフルエンザが人に感染した疑いがあると指摘されたことを受け情報収集を急いでいる。

http://sankei.jp.msn.com/science/science/090425/scn0904250749000-n1.htm

どうやら今回のは死亡率その他から見てH5N1のような強毒型ではなく弱毒型であるな。
Wikipediaによると豚由来のインフルエンザVirusの主な型はH1N1およびH3N2であり、いずれも弱毒型である。
このうちH1N1はかつてスペイン風邪としてパンデミックを起こした際に全世界で4000万〜1億人を殺傷した前科があるのだが、これでさえも弱毒型だという。
恐らく今回のはH1N1だと言われてはいるが、何にせよCDCあたりが遺伝子型の特定をやっているはずなのでその結果待ちであるな。

記事を見る限りではどう見ても既に封じ込めに失敗しているようにしか見えない。しかもメキシコ国内での拡がりようを考えるともうこれはパンデミックまで行くVirusであることはほぼ間違いない。
こうなると1週間以内に全地球を一周するほど広がるはずなので新型亜種ともなるとスペイン風邪の再来ということになるだろう。
これは弊社の推定であるが5月第一週あたりには日本でも二次感染者(国内での人→人感染拡大)が出ると思われる。

弱毒であってもわりと新型亜種は妙に殺傷力が高い上に極めて速く感染が拡大するので、被害が大きい上にH5N1等との混合感染→強毒新型発生のコンボが恐ろしく起きやすくなるのが非常に怖い。
また、こういう状況では経済活動が停滞するのでただでさえ経済危機なところにさらに株価下がるわ、輸出入が減って収入ないのに物価上がってスタグフレーション状態になるわというような泣きっ面にパンチ状態を招く恐れもある。

何はともあれ状況の推移をできるだけ早く把握するのが防衛の第一歩であるのでRSSの特設コーナーを設けて最新ニュースを自動収集させてみることにするので利用してもらいたい。
特に有用または重要度の高い情報については、ブックマークに記録しておくので情報があふれすぎる場合はそちらを見ると良いだろう。
ま、はてな利用者なら弊社がんな事しなくても新着とか人気エントリで十分だとは思うが。

*1:正しくは豚→豚感染型が人→人感染型に変異してなければ人型Virusとは言えない。

対Virus戦争::新型インフルエンザとの同居生活

警告:生物災害の危険あり

おはよう諸君。世間では真夏も過ぎて秋がどうたら食中毒がどうたらいう季節のようであるな。
だがっ!我が研究所でそういう空気は一切無視して皆そろそろ忘れかけているであろう新型インフルエンザ対策についての研究が進行しつつある。
この記事はその研究内容に関するものであるが、いつもの与太話ではなく極めて珍しい事に真面目に調査・研究などした結果を踏まえたものであり、現実に目の前にある危機に関するエントリなのでそこら辺は留意して欲しい。

いささか古い記事ではあるが、まずは以下に引用する記事を読むべし。出来れば原文も全部。

――高病原性鳥インフルエンザについては、今年1月に放映されたNHKの番組(NHKスペシャル「シリーズ最強ウイルス」1月12、13日放映)などでやっと一般にも認知されるようになってきましたが、その実態についてはまだまだ情報の周知が徹底していないようです。まず、「そもそも鳥インフルエンザとはなにか」から説明をお願いできますか。

田代:わたしは約20年前から鳥インフルエンザの研究をしてきました。鳥インフルエンザウイルスは、トリを宿主とするウイルスで、基本的にトリの腸管で増殖します。ウイルスに感染したトリにはあまり激しい症状は出ません。わたしが研究を始めたころは、鳥インフルエンザは鳥に特有の病気で、ヒトに感染することはないと思われていました。

ところが1997年に香港で18人が鳥インフルエンザに感染し、うち6人が死亡するという事件が起きました。この時は香港の防疫担当者だったマーガレット・チャン現世界保健機構(WHO)事務局長が、香港で飼育されていた鶏130万匹を殺処分するという大英断を下して、感染拡大を食い止めました。

この時のウイルスが、現在問題になっている強毒型のH5N1ウイルスでした。強毒型ウイルスによる世界的大流行、すなわちパンデミックが現実味を帯びてきたのです。

http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/interview/90/

どうだろうか?
中には"またこれか。もう見飽きたわ。"という者も居るだろう。
だが、以下のデータを見てよく考えて見て欲しい。

http://homepage3.nifty.com/sank/index.htmlにも記載されているWHO公式集計データ(2008年6月19日時点)によると、これまでの鳥インフルエンザ(H5N1)による感染者数/死亡者数は感染者数385死亡者数243。243/385≒0.631。
つまり感染した場合の死亡率63.1%である。
上記のデータに含まれる感染者達はその時点・その国家で成し得る最高の医療措置を受けているものが多分に含まれるので63.1%という数字が実際に感染が拡大した場合の死亡率に等しいわけではない。*1このため、実際に"今すぐ"大規模感染・いわゆるPandemicが起きた場合の死亡率は更に高くなる可能性がある。*2
このように殺傷能力の極めて高い疾病が毎年流行するインフルエンザに匹敵する感染能力を獲得した場合、恐るべき大災害に発展するのは想像に難くない。

単純な死亡率をみてギャーギャー騒いでみても単なる恐怖煽り記事と何も変わらない
では、このデータがどのような現象を意味しているのか。この点について検証してみる必要がある。

実際にパンデミックが発生した場合でも全ての者が感染するわけではなく、当然感染しない者もいる。
そこで感染率が如何ほどになるかという事が重要になる。
現在までの感染者数が累計で3桁と少数に留まっている理由は皆知っているように鳥を主なターゲットとするVirusが病原体である疾病であり、人間は現在そのターゲットになっていないからであるが、これまでの研究によって徐々にではあるが人間をそのターゲットとすることが可能な方向に向かってVirusが変異しつつある事が判明している。
とは言え、パンデミックを起こし得る能力を持ったVirusはまだ登場していないので実際にどれくらいの感染力があるのかは現在流行中のインフルエンザ(ヒト型)から推定するしかない。一応どちらもインフルエンザであり同系と言えるのでH5N1等のトリ型が人間に対する感染能力を持つ場合も従来のヒト型とほぼ同じ程度持つと考えて差し支えはないであろう。
各機関が行われている過去のパンデミックを参考にしたシミュレーションについて例の記事が言及しているので以下に引用してみる。

――NHKの番組では米国の取り組みが進んでいるとして紹介されていましたが、米国ではどの程度の被害を想定して対策を立てているのでしょうか。

田代:米国の保健省が昨年大手メディア向けに行ったカンファレンスでは、感染率20〜40%、致死率20%ということでした。

オーストラリアのシンクタンクであるロウイー研究所が出した推定では米国では死者200万人が出るとしています。日本は人口密度が高くて米国よりも条件が悪いので死者210万人です。しかし、ロウイーの推計はスペインインフルエンザのような弱毒型ウイルスに対してのものです。

H5N1のような強毒型ウイルスがパンデミックを起こした場合、どの程度の被害が発生するのかについて、きちんとした推計はまだ出ていません。

実際にはどの程度の被害を想定すべきなのか。そこで米国が想定している致死率20%を採用し、感染率を中間の30%として、日本の人口1億2800万人を掛けてみてください。米国の見積もりを採用すると、なんの対策もなしにパンデミックが起きると日本では768万人が死亡するという数字が出てきます。感染率を25%としても、600万人以上の死者が出るということになります。

――第二次世界大戦の2倍以上の死者が出るということになりますね。

田代:スペインインフルエンザの時と同じく、全く無防備のままで強毒型のH5N1ウイルスによるパンデミックを迎えると、こういう事態が起きるということです。これは社会崩壊を意味すると考えていいでしょう。

しかも現在は交通機関が発達しています。米国のカンサス州で最初の流行を起こしたスペインインフルエンザがオーストラリアに上陸するのに1年かかりました。現在はこんな時間的猶予はないでしょう。ひとたびパンデミックが発生したら1週間程度で全世界に広がると考えておかなくてはなりません。

ここで想定されている死亡率が統計から出てくる数値より低いのは現段階で構築中の防衛体制が一定の成果を挙げるか、または強毒性のために患者はすぐ死に(弱毒型に比して)Virusをあまりバラ撒かないなどという事を期待しているのではなかろうか。*3
それはともかく国内での死者600万と言われても感覚的には分かりづらいであろうから、人口に対する死亡率に直してみる。
感染率*死亡率=0.2*0.3=0.06
即ち全人口の6%が失われる事になる。ちなみにスペインインフルエンザの場合の感染率は48%であった事から高いほうの予測で感染率40%を採用すると全人口の12%が死亡する事になる。
(一番無茶な設定かもしれないが誰も何も感染対策をせず、スペインインフルエンザと同じ感染率48%で現状の平均死亡率63%であった場合は全人口の30%が死滅するなどというSFみたいな数字になるので敢えてこの辺には目を瞑ろう。)

最初の6%で考えてみた所で、これはもう首都圏の駅で出勤ラッシュ時間帯に改札に向かって手榴弾を投げ込むとか都市の密集区域に無差別に250kg爆弾を何箇所も落とすとかそういうレベルの騒ぎである。
つまり新型インフルエンザ対策とは疾病対策というより戦争なのだ。
これは大袈裟でもなんでもなく、国家安全保障対策の対象となり得る現象である事は記事でも言及されているし、CDCのサイト等みてもそれははっきり読み取れる。

安全保障の一環として対策を進める米国

――米国はどこまで準備を進めているのでしょうか。

田代:米国は、はっきりと強毒型のH5N1ウイルスによるパンデミックを安全保障の問題だと認識しています。テロや核戦争と同じ、国家の危機という位置づけで、どうやって国民を守り国力を維持するかの対策に予算を注ぎ込んでいます。

CDCは、日本では保健所の大きいものというイメージで見られているでしょうが、実態は軍とともに、衛生保健面で米国という国の安全保障を司る組織です。日本の保健所とは全く組織の性格が異なる、疾病に対して攻撃的な姿勢を持つ軍隊に似た組織なのです。

――スペインインフルエンザでは軍隊が流行の発信地となりましたが、米国は国防総省も含めてパンデミック対策を組んでいるということでしょうか。

田代:米国防総省がなにをやっているかは外からは分かりません。しかし、当然のことながら相当の予算を注ぎ込んで対策を行っているはずです。現在米国は毎年約9000億円をパンデミック対策に注ぎ込んでいますが、表に出てこない国防費からの支出を考えるとこれだけでは済まないでしょう。表から見えるのがすべてだと思ってはいけません。

在日米軍を含む在外派遣軍を、パンデミック時にどのようにして米本土に撤収するかという行動計画も、当然のことながら策定済みのはずです。

米国は、国民に対して、新型インフルエンザに関する知識の周知徹底や籠城のための家庭備蓄の呼びかけを行う一方、事前に用意できるプレパンデミックワクチンの備蓄、全国民分のワクチンを半年で製造し、定めた優先順位で順次接種していく体制の整備を着実に進めています。

この記事を読んだ者は家族・友人・職場の同僚の人数を思い出すべきである。
そのうちの6%が消えるとはどういう事なのか考えてもらいたい。

パンデミックというのは全世界で同時発生する問題であるから誰も無関係ではいられない。
そしてそれが起きるのかどうかではなく既にいつ起きるのかという問題である事も心しておくべきだろう。
以上の点を踏まえてどう行動すべきなのか考え、そして実行する必要がある。

我々が対処しなければならない脅威は何も新型インフルエンザだけではないわけだが、このインフルエンザへの対処を通じて他の危機管理対象に関しても何らかのノウハウが得られるものと我が研究所では考える。
この場合、国家レベルでの対策は各種の他研究機関などで進行中であるし、ここを見るような一般市民には直接タッチできるような代物ではないし*4、いざという現場では個人や数人単位の小規模コミュニティでの行動が基礎的な力となる。
以上の考えに基き我が研究所では数回に分けて「個人でできる新型インフルエンザ対策」について例の日経記事を元に考察など述べてみる事にした。
もし、「それ違うんじゃね?」な事書いた場合はコメントかメールあたりで知らせてもらいたい。
今回は真面目なので。

今回は問題提起というか企画の宣伝みたいなもんであるしあんま長文書いてると疲れるのでこの辺で終わりとす。
興味はあるけど情報足りなくてわかんねー!な者向けに記事にもあったNHK番組の本だけ紹介しておくので読んで予習でもしてみるが良い。

NHKスペシャル 最強ウイルス 新型インフルエンザの恐怖

NHKスペシャル 最強ウイルス 新型インフルエンザの恐怖

あれこれ突っ込みが入るところもないではないだろうが読んで見た感じでは比較的よくまとまっているように思う。
この本と弊社のブックマークの関連エントリなどの情報源を併せて読んでもらいたい。

*1:当然ながらアウトブレイクが確認された後に医療チームが派遣される前、または病院で受診する前に死亡した者も含まれるため、厳密に全てというわけではない。

*2:もちろん対策や研究の進展などの要因により死亡率が下がる事もあるが、その場合のほうが厄介である事もある。そこら辺の事情は引用元の記事に詳しい。

*3:この辺の推定は根拠なし。しかしシミュレーションの死亡率低下も疫学的な知識が不足しているためか根拠不明のまま。

*4:選挙やら何やらを通じての間接的なタッチはあるがそれはおいといて。

長文コメントが気になる昨今

携帯カメラ故に荒い画像

いつもの如く月1更新な我が研究所であるが諸君は元気にしておったかね?
弊社が仕事やら御庭番育成やらに集中しておる間にも時は過ぎ、気がつけば知人のブログ記事なども
長期間放置したメールアカウントの如く溢れ返っておる。

たまには作業の手を休めてコーヒーなど嗜みつつ風流なコメントでも書かんとしたのであるが、ついつい長文を書いてしまういつもの癖が。
毎日毎時こまめにチェックして即一言コメントなどという昨今のSNSユーザのようなマネは弊社にはできんのだっ!

というわけでコメントではなくトラックバックなどしてみるものとす。
む、これはこれで古の文通ライクであり趣深いな。良い。


以下、ぎんじ氏のブログより引用

前フリはさておき、今日の御題は見ての通りウォーリア系辞めましたΣd(・∀・)
そう、ドルイドになったんです
長い道のりでした・・・
http://silverjackal.spaces.live.com/blog/cns!D17DD4BA187FAEE!478.entry

ぬおっ!いつの間にやら弱腰戦士ではなくなっておるではないかっ!
てかメイプルシロップ漬けじゃなかったのか、と。

例によって例の如くメシ食ったりゲームしながらの更新であるので作業中の状態を逐一公開しておる。
明らかに書きかけ状態である場合は作業中か、MoEでもしてると思ってくれぃ。時には更新まで5日ほどもかかる事があるが。

そして時は過ぎ(メシ終了)

ふ〜食った食った!久々に熟れ寿司やら原材料の大豆(遺伝子組み換え済み)の栽培から全て手作りの味噌汁などという健康的な食事をしたが、やはり美味いモノには手間隙がかかるのう。手間がちとかかり過ぎて軽く餓死しかけたではないか。
お?気がつけば更新途中で席を立ってから9ヶ月あまり経過しておるではないか。
しかもトラックバック先のブログがいつの間にやら消滅しておる始末。むぅ、世間の時の流れというものは実に速いのう。

まあ良い。問題なしっ!このエントリはこのまま放置決定!
更新しかけのまま放置というのもまた斬新かつ趣深い更新サボタージュ技法であるゆえ、今後とも多用していく方針でFAとす。